その日、ヒゲリンは僕をゲーセンに呼び出した。
別段、特別な用事もなかった僕は、ヒゲリンの誘いを受け、ゲーセンへと車を走らせた。
着いてすぐにヒゲリンの姿を発見し、僕はヒゲリンの隣に着席した。
ギルティの練習に余念のないヒゲリンは、既に練習を始めていて、ある程度の応用コンボを完成させていた。
「すげ…」と賞賛する僕に、ヒゲリンはコンボの解説を始めた。すると、そこに乱入者が現れた。
「今日はやり合う気分じゃないんだけどな」
そう言ったヒゲリンだったが、二勝、三勝と連勝を重ねていく。気が付けば、ヒゲリンは五連勝していた。
「どう?相手の動きは」
「完全に待ちだね」
ヒゲリンはそう言い、小さく溜め息を着いた。そして、ロボカイを相手が使ってきたところで連敗したヒゲリンは、飽きたのかKOF13CXをやり始めた。
「せっかくだし、俺も乱入しよっかな」
そう僕が言った矢先、ヒゲリンに乱入者が現れた。
見ると、隣のギルティのキャラが棒立ちになっている。明らかに、先程の乱入者がKOF13CXに乱入したようだった。
これには、僕もヒゲリンも思わず苦笑する。
「素人狩り?」
「多分」
質問する僕に、ヒゲリンは苦い顔をしながら頷いた。
対戦が始まる。
ヒゲリンはクーラ。相手は爪庵。
ヒゲリンは、待ち気味の相手を見事崩し、余裕の一勝を飾る。
クーラはそのまま二人目を倒し、相手は大将にクラークを出して来た。
対戦が始まった。
クラークは全く動かない。クーラの牽制にひたすら待ち、止まったところをコマ投げという、何とも卑劣なやり方を繰り出した。
これには、ヒゲリンも激怒。眉を釣り上げる。
「分からせるんだね?」
僕の問い掛けに、ヒゲリンは黙ったままだったが、いつものヒゲリンならば、待ちこそ正義の輩を粛正するべく行動を起こすはずだ。
予想通り、ヒゲリンに攻めはより激しいものとなり、待ちクラークに激しい択一掛けられた。
そして、ヒゲリンは見事フルボッコにされた。
「出直そう」
そう言って、僕はヒゲリン肩を叩いた。ヒゲリンは、俯いたまま呟いた。
「下らない時を過ごした」
ヒゲリン、負けた俺等がそれ言っちゃ駄目。
負け犬の遠吠えにしか聞こえない。
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