446の素人格ゲーブログ

ゲーセンでゲームをするのが大好きなオッサンの日常ゲームブログ!毎週金・土・日更新!!

【第十七話】古本屋巡りの果てにー…

446の趣味の1つに『古本屋めぐり』というものがあった。

半年に1度、古本屋が決算を行う時期に、新しい本との出会いを求めてぐるぐると地域を徘徊するのである。

アウトドアの人間から言わせると、少し気味の悪いその趣味も、446にとっては大事な趣味の1つであり、今年もその時期がやって来た。

古本と言っても、446は漫画や小説は古本屋であまり買うことはない。狙いは、格闘ゲームのムックである。

ムックとは、マガジン(magazine)とコミック(comic)を合わせた造語で、雑誌の1つの特集をそのまま1冊の本にまとめたものをそう呼んだ。

だが、格闘ゲームが廃れたこの時代に、まずムックを取り扱う古本屋はそう簡単に存在しない。それどころか、ゲームの攻略本から手を引いた古本屋まで存在する。

今回の古本屋巡りも、収穫はないだろうなと446は思った。

そして、あっという間に最後の1軒。446の思った通り、何十軒とまわったのに収穫はゼロだった。

最後の1軒は、446が一番期待を寄せている古本屋だった。

値段は高いが、状態が良く、そして何より品揃えが良い。多少、平均より高くても、贅沢など言っていられない。

446の他にも、同じように格闘ゲームのムックを探している者達はたくさん居るのだ。機会を逃せば、次に待っているのは、狙いの品を見付けたのにも関わらず、先を越されて買われてしまうという悲しい現実が待っている。

半年前、少し高いからと446が妥協したKOF2002のムックは、3日後に無くなっていた。

その時、自分の愚かさと認識の甘さを悔いた446は、今度は絶対にそんな過ちは繰り返さないと強く財布を握り締めた。

いざ、古本屋の店内に入った446は、まずゲーム攻略本コーナーに目を向けた。だが、案の定そこには人気タイトルのゲームの攻略本だけしかない。格闘ゲームのタイトルなど、全く存在しなかった。

(ま、ここに期待はしてなかったけどね)

それは、もちろん446の予想の範疇(はんちゅう)だった。だが、ときどき攻略本コーナーにもムックが置いてあることがあるので、一応チェックしたのだ。

続いて446が見に行った場所は、雑誌コーナーだった。

雑誌コーナーには、様々なジャンルの雑誌がジャンル別に棚に陳列されている。

もちろん、ゲームというジャンルも存在し、そこにはゲーム雑誌や大判の攻略本がまとめて陳列されていた。

(そう。本命はここ!)

ムックは、ゲーム雑誌から派生した本なので、雑誌と同じ大きさのものが大半だった。故に、古本屋では雑誌として分類されることが多く、ゲーム攻略本のコーナーよりも雑誌コーナーに置かれていることが多かった。

446は、棚に陳列されている雑誌に目を凝らしながら、目当ての格闘ゲームのムックがあるよう強く願った。

(格ゲーのムック。あるにはあるけど、全部持ってるー…)

そう。コレクションも大半を集めると、今度はこういう事態がよく発生するのだ。

品揃えは決して悪くない。だけど、全部持っている。

446に大きな虚無感が襲った。だが、446はまだ諦めていなかった。

古本屋には、まれにバラエティ雑誌コーナーというのを設けてある場所があった。バラエティ雑誌コーナーとは、文字どおりジャンルに関係なく雑誌が置いてある場所を示した。

ゲーメストムックやオールアバウトのムックなど、あまりに古く、希少価値がないムックは、たまにこういう場所に置いてある時があった。

(頼むぅ~、頼むぅーッッ!!)

祈りながらムックを探す446だったが、もちろんそんな人生は甘くない。

(ゲーメムック、あるにはあるけど、やっぱり全部持ってる!)

がっくりと肩を落とし、446は落胆した。

そこで、スマホに着信があり、446はテンションだだ下がりのまま、電話に出た。

「もしもし」

「あっ、446さん。お疲れさまです。今日の飲み会来ますよね?」

「大丈夫だよ」

「ほら、ムック買いに行くとか言ってたでしょ?お金が厳しいならなと思いまして」

「買うも何も全滅だから気にしなくて良いよ

「そうですか。なら、会費は2000円ですので。場所はいつものところです。お待ちしております」

「はいはーい」

446は、電話を切ると、悲しそうに財布の中を見つめた。財布の中には、ちょうど10000円入っていた。

(まぁ良いさ。どうせ二次会まで行けば、10000円なんてすぐに無くなるんだ)

そう思い、外に出ようとした446の目にふと1枚のDVDが飛び込んできた。

ストリートファイター3サードストライク・闘劇DVD・プレミアム価格3000円』

「なっ!?」

闘劇のDVDを売ってあるだけでも珍しいというのに、サードの闘劇のDVDが3000円というのはかなり安い。

(天は、俺を見放してはいなかった!)

心の中だけでガッツポーズをした446は、急いでDVDを手に取り、レジへと持って行く。

「すみません。これ、お願いします」

446がレジのカウンターにDVDを出すと、女性店員はDVDを手に取り、事務的に処理をする。

「1点で8000円になります」

え?

聞き間違いだろうと思い、446はもう一度店員に聞き直す。

「すみません。3000円ですよね?それ」

動揺を隠せず、震えた声でそう言う446に、女性店員はやはり事務的に言葉を返した。

「いいえ、8000円です!」

嘘だ!そんな筈はない!!
だって、…だってプレミアム価格だぞ!

446が頭の中でそう思いながら、身体を固めていると、女性店員が奥からDVDのカタログを持ってきて、446に分かるようにそれを見せた。

「こちら、闘劇DVDのスト3サードとアルカナハートFullはプレミアム料金となるため、定価よりお高くなります。どうされますか?

プレミアムって、そういうことぉおぉおーッッ!?

これはマズい。さすがに8000円もするものなんていくら何でも買うことはできない。

そう思い、断ろうとした446だったが、後ろには人が並んでいて、断れるような雰囲気ではなかった。

腕を組み、睨み付けるその視線を目の当たりにすると、とてもじゃないがここで「やっぱり買うのやめまーす」など言えはしない。

黙って待たされている彼等は目て語ってるのだ。

お前、まさか俺達をここまで待たせといて、結局買わないとかふざけたこと抜かさないよな?と。

「すみません。買います」

結局、背後からの重圧に負けた446はDVDを購入し、財布を確認する。すると、2000円しかもう残っていなかった。

すぐさま、446は後輩に電話した。

「もしもし。今日って二次会行くの?」

「もちろんですよ」

「じゃ、俺は二次会キャンセルでいい?」

「あっ!じゃあやっぱり、闘劇のスト3サードのDVDを買ったんですね」

なんでお前がそれを知ってるんだ。

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