446の素人格ゲーブログ

ゲーセンでゲームをするのが大好きなオッサンの日常ゲームブログ!毎週金・土・日更新!!

【第十六話】ウル4一家

その日、446はいつものようにウル4の練習を行っていた。

簡単なコンボの練習をしながら、CPU戦でオニを確実に出せるように頑張っていた。

というのも、先日このゲームセンターの常連である少年に「オニを出して」とせがまれ、オニを出そうとしたのだが、446はオニを出し損ねたのである。

オニとは、ウル4のCPU戦における隠しボスで、条件を満たさないと出てこない。オニ以外にも3人の隠しボスが居るが、その中でもオニは一番出すのが難しい隠しボスだった。

しかし、ウル4をずっとやっている者が、オニを出せないなど恥ずかしいことに変わりない。幾ら理由を付けようが、理由を付けた分だけ自分が恥ずかしい想いをするのは確かだった。

なので、446は自分の腕の未熟さを恥じ、今度少年と会うときには必ずオニが出せるように、練習していたのである。

しばらく練習して、ベンチに腰掛けていると、少年が446を見つけ走って来た。

「おっちゃーん!」

おっちゃんなんて年じゃないんだけどな。って、俺、もう31か!と、心の中だけで一人ツッコミをした446のことなど知る由もない少年は、息を切らしながら、満面の笑みで言った。

「今日は、オニさん出てくる日?

実は、オニを出し損ねた日、446は少年に嘘を付いてしまった。その嘘とは、「オニは今日は出てこない」と言ったことだった。無論、条件を満たせばオニはいつでも出てくる。だが、あろうことに446は自分の未熟さを棚に上げ、オニが出てこないのは月日のせいにしたのである。

少年の笑みが446の心に突き刺さる。もう逃げられない。

「あぁ。今日はいつでも出てくるよ」

「わーい。じゃあ、出して出して!」

実は、先程練習はしていたが、失敗して殺意リュウが出てしまった。

実際、かなりの不安があったが、少年のため、そして自分のプライドのため、446はやるしかなかった。

お金を入れる。スタートボタンを押す。画面がタイトルからキャラクターセレクトへと移動する。

446は、ケンを選択し、CPU戦が始まった。

ウル4のCPU戦で気を付けなければならないのは、3面・5面だと446は考えていた。この2つの面は、アルゴリズムが高く、こちら側の行動に対し、敏感に反応してくる。と言っても、さほど気にすることではないのだが、一歩間違うとラウンドを落とすなどのミスが勃発してしまうので、この2つの面で無理な行動は446にはできなかった。

オニの条件で懸念されるのは全部で3つ。ラウンドを落とさないということと、パーフェクト勝利と超必殺技を規定数以上決めるというのだ。

ラウンドを落とさないというのは、丁寧な立ち回りをしていれば、そこまで問題はない。パーフェクト勝利は、序盤で取っておけばこれも何とかなる。問題は超必殺技フィニッシュを規定数以上決めるというものだった。

この前失敗したのは実はこれで、【通常技必殺技EXセビキャンウルコン】というのが少年は好物だったので魅せていたのだが、ライバルであるルーファス戦で最後のキャンセルを失敗してしまい、逆にルーファスにウルコンを入れられてラウンドを取られたのである。

その前回の失敗と反省から、今回はウルコンとスパコンは別々に使うことにした446。先にスパコンを使い、失敗してもウルコンで元を取れるように工夫した。

CPU戦は、対人戦とは違うのだ。いちいちスパコンを残しとく必要もないと446は考えたのだ。

その甲斐あって、ラスボスであるセスを倒せば、あと一歩でオニというところまでこぎ着けた。

「さぁ、ここからが本当の戦いの始まりだぞ!」

少年に446はそう言い、少年はコクリと頷いた。

そんな緊迫した状況の中、誰かが446の肩をトントンと叩いた。

446は、少年の悪戯だろうと振り返ると、そこには一人の爽やかなイケメンが立っていた。

「すみません。乱入して良いですか?」

(ここで!?)

446は、心の中だけでそう呟いたが、流石に「オニを出したいので、乱入しないで下さい」とは恥ずかしくて言えなかった。

「どうぞ」

446がそう言うと、そのイケメンは大量に両替したお金を手に持って、2P側へとまわった。

少年の笑顔がまた胸に突き刺さる。

すまん、少年。おっちゃん、またオニを見せれないかもしれない。

少年に心の中だけで446は謝罪した。そうこうしている内に対人戦が始まった。

イケメンは、ヒューゴーを選択。よりによって、446の苦手な投げキャラだった。

打撃・コマ投げ、両方から戦えるヒューゴーは、446にとって非常に厄介なキャラクターだった。

とりあいず、近付かれると強力な投げが入る。向こうの技をガードすれば、446の技術では確実にコマ投げを決められてしまう。それをさせないためには、ともかく攻めを継続するしかない。

ゲージと相談しながら通常技と必殺技で牽制を出してヒューゴーの動きを封じていき、何とかギリギリで勝っていく。だが、イケメンは何度も乱入し、互いに癖が分かり始め、苦しい展開が何度も続いた。

それでも、何とか446は勝利を収め、イケメンの乱入ラッシュも納まり、何とか少年にオニを見せれそうだと思ったその時だった。

「うぁあぁーん!」

少年が突然泣き出したのである。446は、その理由が分からずタジタジしていると、先程のイケメンが少年を抱き上げ、少年と同じような眩しい笑顔を見せ、446に言った。

「いつも息子の面倒を見て頂き、ありがとうございます。息子から、常々お話は伺っておりました」

え?イケメン、少年のパパなの??

(なるほど。だから少年は泣いたのか)

だったら、最初からそう言ってくれよ。446は、心の中だけでまた呟き、セス戦をやっていたら、イケメンがまた爽やかに言った。

「次は、妻が乱入しますので!

…嫁さんも、ウル4やるんだ(T_T)

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