その日、446はヒゲリン・サラブレッド・ハクビシンの3人ととに、ゲーセンに集まって格ゲーの身内戦をしていた。
446達が身内戦をする横で、学生達がガンダムをプレイしながら声を挙げている。いつも通りの光景だ。
しかし、その日は鉄拳の筐体だけ雰囲気が違っていた。
いつもは、家族連れやカップル、学生達で盛り上がる鉄拳の筐体に、誰一人座っていない。
珍しいこともあるもんだと話していた446達の元に、恰幅の良いおじさんが現れた。年の頃は40代ぐらいか。世間は盆休みだというのに、背広を着て身なりを整えていた。
どこかの業者だろうか。
446がそう考えていると、その恰幅の良いおじさんは、おもむろにポケットティッシュを取りだし、筐体を拭き始めた。
「なっ!?」
驚愕する446達の目を気にすることもなく、筐体を拭き終えたおじさんは、次に用意したコインを筐体に置き、鉄拳をプレイし始めた。
カードをリーダーに翳すと、鉄拳やってますレベルの高い段位が画面に表示された。
当然、オンライン対戦をするんだろうな。
446は、勝手にそんな予想をしていると、その予想は脆くも崩された。
なんと、トレーニングモードでコンボ練習を始めたのだ。
他の地域はどうか知らないが、僕の住む地域ではそういう方をあまりお見受けしない。寧ろ、実力がある人ほど、早く対戦がしたいという感じで、すぐにオンライン対戦を始める。
「意識が高いな」
ヒゲリンがおじさんの行動に関心した。ハクビシンやサラブレッドも対戦を中断し、おじさんのプレイを関心を示し始めた。
おじさんは、相当やり込んでいるようで、見た目には失敗していないような連続技も、納得がいかなかったのだろう、首を傾げ、何度も同じ連続技の練習をしていた。
そして次の瞬間、四角い大きな物体を筐体に置いたのである。
「あれは、タブレット!」
ゲーセンにタブレットを持ってくる人間など、少なくとも446の行きつけのゲーセンでは見たことなかった。それは、ヒゲリンやハクビシン、サラブレッドも同じだったようで、その光景に四人はただただ驚愕したのだった。
「でも、タブレットなんて何に使うんですかね?」
ハクビシンが冷静に疑問を投げ掛けたところに、透かさずヒゲリンがその疑問に答える。
「あれ見てみ。鉄拳キャラの技表をタブレットでチェックしているのさ」
「なるほど!では、もうひとつ質問してもいいですか?」
「なんだい?」
ハクビシンは、おじさんの方を指差し、いや正確にはおじさんのスマホを指差し、ヒゲリンに素直な疑問をぶつけた。
「スマホでも調べれるのに、なぜゆえタブレットを使用してるのでしょう?」
「………」
ーENDー
■感想
というわけで、オンライン対戦をするのに、かなり意識高い系のおじさんがいらっしゃったので、その方の話を書いてみました。
僕も、初めてプレイするゲームとかで、インストカードが筐体に貼っていなかったら、それはスマホで調べたりしますけど、…タブレットで調べるということはあまりしないので、意識高いなと思い、観戦していました。
確かに、タブレットの方が技を確認するとき分かりやすくはあるんです。
ただ、筐体に立て掛けて、やりながら確認するというのは意識高いですね。
その場でやりながら確認し、もう一度自分のプレイを見直す。
気合いの入り方が違いました。
僕らも、もう少し意識高く持って、ゲームをした方が良いかな。
閲覧ありがとうございました!