(背後で誰かが見ている気がする!)
446は、エヌアイン完全世界をやりながら、そう思った。
案の定、446の背後には二人の声が聞こえてきて、何やら楽しそうに雑談していた。
「エヌアインは、あれで奥の深いゲームだからなぁ」
「え~。でも、操作も簡単だし、技術もそこまで要らない気がしますけど」
どうやら、彼等は先輩と後輩の関係にあるらしく、二人の内の一人、後輩は敬語を使い、先輩と話していた。
「お前、なにもわかってないな。シンプルだからこそ、駆け引きが難しいんじゃないか。それに、エヌアインにも、鬼コンとまではいかないが、長いコンボは存在するぞ」
そう言って、先輩は446の方を指差した。
「見ろ!あれなんか、かなりヒット数いってるだろう」
「本当だ!」
確かに、ヒット数はいっていた。しかし、長いコンボと言われると、そうではなく、非常に簡単且つ短いコンボだと446は思った。
コンボの長さは、技をキャンセルする数で決まる。
今回、446がやったコンボの場合、キャンセルする数は3回で、長いコンボというのには、少し語弊があった。
コンボが長いというよりは、演出が長いと言った方が正しいだろう。
後輩は、すっかり先輩の言うことを信じ込んでいる。
446は、この間違いを教えるべきかどうか迷っていた。
しかし、CPU戦は佳境を迎えていた。後ろを向いて説明している暇などない。道中、そして締め共に、ミスを犯せば、今までの苦労が全てが水の泡になるからである。
今は、黙って先輩の解説を聞くことにした。
そして、最終戦。この試合では、簡単に完全神殺や最終特攻で締められる方法がある。それは、ラスボスのヴァルキリアの滅心斬に合わせ、功性防禦を使い、ヴァルキリアが端に降り立ったところに、最終特攻、または完全神殺をブッ放すというもの。本来、単発はダメージが大きいので、あまり使わない方が良いのだが、ヴァルキリアの体力が少ないときなど、どうしても使わなければならないときに、446はこの方法を使用していた。
「見ろ。また、決まったぞ。33ヒットだ」
先輩は、後輩にそう説明するが、これ、コンボじゃなくて単発だから!
ダメージ大きいだけで、波動拳とかと一緒だから!
というか、最終特攻はコマンド要らずのABC同時押しなので、出すだけなら波動拳の方が難しいぐらいである。
最早、こう思われることは、僕が悪いことをしているようにさえ思えてくる。
これは、やはり言うべきだろう。
446は、全クリするとゆっくりと立ち上がった。
このことを公言すれば、446の未熟な腕が露呈されてしまう。しかし、勘違いしたままにしておくのは、もっと心苦しいことだ。
「あっ、ちょっとすみません。」
背後に居た二人に声を掛けた446は、その瞬間、驚愕した。
「はい、なんでしょうか?」
スタッフだったのか。
閲覧ありがとう御座いました。